★「ながら歩き」 IT機器は、人間を阿呆にする……2011年10月13日 12:30

 NHK クローズアップ現代 「“ケータイ事故” 駅のホームでいま何が」が話題になっているようだ。“ケータイ事故” との言葉で内容が充分に想像できたため、番組は観なかった。何を今更……(2014/04/03:最近は、ケータイからスマホへと、さらに危険度合いが増している) 
 ケータイに目をやりながら、駅のホーム、道路、交差点、人込みを歩く…… このような行動を「ながら歩き」と言うそうだが、全く周りを意識しないで歩く連中を見ると、「阿呆」としか言いようがない。

sanen

 今から40年程前(1958年頃)、「ながら族」という言葉が流行った。ラジオや音楽を聴きながら勉強したり、テレビを見ながら食事をするなど、何か他の事をしながらでないと物事に集中出来ない人をいうそうだ。(当時、「ながら神経症」と名付けた教授もいたそうだが、近年、ながら族の方が効率の良い頭の使い方をしているとの見解や脳の活性化に良いとの意見も出ているらしいが)

 この「ながら族」「ながら歩き」の大きな違いは、「屋内」と「屋外」での行動と言える。
 「ながら歩き」の現象は、日本文化のある部分の喪失を意味していると思う。「内」と「外」を意識し、最低限の礼儀を礎とした人と人との繋がり。そして、これによる「ほど良い人間関係」を保っていた社会の崩壊……

 日本には、不文律ともいえる”教え”があった。
 - 他人(ひと)様に迷惑をかけてはいけない。
 - 世間体をはばかる。
 - みっともない真似はするな。
 - 体裁が悪いことはするな。

 何を言うか! 俺は、俺だ! 私は、私よ! 人目なんか気にしてたら面白くも何ともないわ! そうなのである。若者だけではない。充分歳をとった人たちにも同じような行動をとる人を見る事ができるのである。

- 電車の中で、大口を開けて眠る人たち
- 電車の中で、顔を歪めて化粧する女たち
- 歩道でありながら、我が者顔で自転車を走らせる人たち
- 寒くなったのに、相変わらず風鈴を仕舞わない人たち
- 決まった日に、決まったゴミをきちんと出さない人たち

 何故、そうなったのか? 生活環境の変化にもその原因をみることができると思う。

 ※ 横生活から縦生活への変化
 住宅事情を考えれば致し方ない事なのかも知れない。従来、日本は戸建ての庭付き住宅が主であった。そして、長屋の存在。いずれにしても平面上での生活であった。否が応でも、隣の住民と顔を合わせる機会が多くなり、また、それが生活を支えていたとも言える。ご近所の状況は、住民すべてが判っていた。いろいろ問題があったとしても、その事情はその家の事情。それを包みこんでの近所付き合いがあった。ご近所には、うるさい爺さん婆さんが必ずいた。直接、子供たちに小言を言うだけでなく、親にも告げた。それは、不文律に基づいた忠告であり、また、聞く方も受け入れる余裕があった。
 縦社会。ビルの中での生活。上に他人が居て、下にも他人が居る。しかし、顔を合わせる機会は減少し、せいぜいエレベーターの中で挨拶を交わすくらいである。ほぼ密閉されたコンクリート空間での生活。そして、それを心地良いと思う人たち。それを非難することはできないし、そんな時代になったと納得する以外にないのである。で、何が起こったか。「個」「集団(または、世間)」との完全なる「分離」である。

 これらの現象を助長したのが、生活・文化を変えたと賞賛されている機器類の登場である。

・ウォークマン:音(耳)の世界における世間からの遮断
・ケータイ :視覚(目)の世界における世間からの遮断
 そして、この両方による世間(社会)と自己の遮断

 これらは、「他人」や「世間」を「無視」し、「己だけの世界」に陶酔できる環境を構築できる「世間排除機器」なのである。もちろん開発者たちは、それを目的にした訳ではないはずである。しかし彼らは、人間を判っているようで、実は判っていないのである。「個人」の快適さ・便利さ(メリット)は判っていても、それらが、「社会」にもたらす危険な行動(リスク)まで予測できなかったのである。そして、いかに多くの「阿呆」を生み出してしまったか、気付いていないのである。
 世の中は、確実に、「リスク:メリット=50:50」の上に成り立っている。(原発人災事故を例にするまでもないが)

 
 「個」「集団(世間)」…… 離島に独りで生活するのであればともかく、常に付きまとうこの関係を、もう少し意識すれば、心地良く思える環境が出来上がるのではないだろうか。せめて、そのような社会で生きていきたいものである。

 蛇足ながら、今のところ全く必要性を感じないため、私は、ケータイなどを使ったことがないし、当然、不ケータイである。

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